変化を遂げる日本のリフォーム市場

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更新:2017年2月23日

日本では少子高齢化が進み、総世帯数は2019年をピークとして、その後減少に転じる*1と予想される一方、国内の住宅ストック数は、世帯数を15%以上上回り*2、世帯数と住宅ストックとの乖離が進むことで、空き家の増加も課題となっています。こうした社会環境の変化や空き家問題をふまえ、政府は従来の新築中心から、既存住宅を有効活用するという住宅政策へと軸足を移しています。

政府の成長戦略においても、「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」が主要施策として盛り込まれ、国土交通省では、市場規模を2013年の11兆円から2025年には20兆円まで増加させる数値目標を掲げています。2016年には、既存住宅のリフォームを推進するため、窓、ドアなどの改修によって住宅の断熱性を高めたり、節水型トイレや高断熱浴槽の導入で省エネ性能を高めるエコリフォームなどに関して、国が費用の一部を補助する制度が導入されました。

加えて、中古住宅の価値を適正に判断できるよう、専門家による住宅診断の推進や、改修を資産価値向上に反映できるような建物の評価方法の見直しといった環境整備を進めています。欧米では築年数よりも、取引時の建物の状態を重視して価格が決まる傾向がありますが、日本では、建物の築年数によって資産価値が決まるという商慣行が続いており、リフォームを行っても売却時の価格に反映されにくいという課題がありました。

このように、成長戦略の実現に向けて、今後もリフォーム市場の拡大を後押しする制度が打ち出されると期待されていますが、野村総合研究所は、さらなる活性化に向けては、政策的な支援はもちろん、民間事業者の創意工夫が必要と指摘しています。*3

「日本では、スクラップ・アンド・ビルドという古い仕組みから脱却しようとしています」とLIXILジャパンカンパニー リフォーム事業部長の田口和敏は語っています。「日本の住宅ストックは、数の上では足りていますが、性能面では十分であるとは言えません。LIXILでは、そういった現状を変えたいと思っています。住んでいる人が手直しをすることで、古い家屋をより住みやすく、快適にすることができるのです」。

田口によると、持ち家をリフォームしたい人は大きく3つのカテゴリーに分かれると言います。最も人数が多いのは、定年退職後の世代で、年をとっても安全で快適に暮らせるよう、バリアフリーな住宅にするための設備の更新をしたいと考えている層です。次は、初めて住宅を購入する若い世代の夫婦で、古い住宅を自分たちのニーズに合うようにリフォームしたいと考えている層です。最後は、子どもが独立して空いたスペースを有効活用しようとする、40代半ばから50代半ばの世代になります。

国内リフォーム事業の拡充を進めるLIXILでは、リフォームの魅力を多くの消費者に直接訴求するため、2015年から、大規模な展示会「LIXILリフォームフェア」を全国の主要都市で継続的に開催しています。リフォームでは、キッチンや浴室などの水まわりが優先される傾向がありますが、寝室、書斎、ユーティリティルーム、リビングルームなどあらゆるスペースのアップグレードが可能であり、LIXILが提供する幅広いリフォーム商品 計180点を展示し、リフォーム後の住まいのイメージを体感できる場となっています。

しかしながら、政府の取り組みや多くの事業者の参入にも関わらず、リフォーム市場の活性化はいまだ道半ばという状態にあります。*4 さらなるリフォーム需要の掘り起こしと構造改革が求められる中、LIXILでは2016年10月より、新サービス「リクシルPATTOリフォーム」の提供を開始しました。リフォームは自らのニーズやライフスタイルに合わせた住まいを作ることができるのが大きな魅力ではありますが、かかる費用が千差万別でわかりにくく、消費者のリフォームに対する不安につながっていることが明らかとなっています。*5 LIXILの新サービスは、リフォーム商品の代金だけでなく工事費を含んだ概算価格を明示し、わかりづらいとされてきたリフォーム費用の明朗化を図るものです。リフォーム業者が工事費を含むパッケージ価格を消費者に提示するケースはこれまでにもありましたが、メーカーであるLIXILが、全国規模のネットワークを構築して実施するという点で、業界の慣例を覆す新たな挑戦だといえます。

LIXILでは、消費者からの問い合わせに対して、24時間以内に対応する専用受付窓口を設置するほか、全国3,000店*6を超える登録店舗「リクシルPATTOリフォームサービスショップ」が販売・施工を行います。従来は、施工業者が顧客の住宅まで出向き、工事費を含めた全体の費用を算出するのが一般的でしたが、問い合わせをすると、商品代金に工事費を加えた分かりやすい参考価格例を明示されるため、必要な費用の目安をすぐに把握することができます。さらに詳細な見積もりが必要な場合は、サービスショップの現地調査を行い、3日以内に見積もりを得ることができます。

「リクシルPATTOリフォーム」では、まず潜在的需要の高い50万円未満の小規模リフォームに着実に対応することで、リピーターを獲得し、今後、中規模・大規模なリフォームにつなげていくことを目指しています。LIXILが運営するリフォーム業者とユーザーをマッチングさせるサイトへの相談件数を見ると、50万円以下の小規模リフォームが、全体の4割を占めているものの、そのうちの約2割が施主と施工業者のマッチングが成立していない状況にあります。*7 職人の数が減っていることなどを背景に、施工業者が収益性の高い大きな工事を優先したり、リフォーム費用がわかりにくく、安心して頼める業者が見つからない、といったことが背景にあるとLIXILでは分析しています。

「リフォーム工事に時間がかかると、日常生活の妨げになることから、必要な準備作業のほとんどを工場で行い、施工時間が短縮できるよう工夫しています。つまり、玄関ドア、窓、といったパーツだけを取り外し、新しく持ってきたパーツをそのままはめ込むだけでリフォームが完了する仕組みです。簡単、スピーディーにリフォーム工事ができる商品を拡充することは、大きなアピールポイントになります」と田口は語っています。「リクシルPATTOリフォーム」では、簡単に住まいの性能を高められるよう、短工期・省施工の商品を対象に展開しています。

リフォーム市場のさらなる拡大には、効果的な政策に加え、これまでの業界の常識を覆すような新たな手法で、消費者の需要を喚起することが必要とされています。LIXILの社長兼 CEO の瀬戸欣哉は、「生活者の視点から業界のイノベーションを起こし、人びとのより豊かで快適な住まいと暮らしを実現していくことが重要」だと変革の必要性を強調しています。日本の住宅市場は、いままさに構造的な変革期を迎えているのです。

*1 国立社会保障・人口問題研究所 調査(2013年1月)
*2 総務省統計局 平成25年度 住宅・土地 統計調査
*3 野村総合研究所 2030年の住宅市場 ~"移動人口"の拡大が人口減少下における住宅市場活性化の鍵に~(2016年6月)
*4 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター 住宅リフォームの市場規模(2015年版)
*5 住宅リフォーム推進協議会 「インターネットによる住宅リフォーム潜在需要者の意識と行動に関する第9回 調査報告書」(2015年3月)
*6 2017年1月時点
*7 株式会社LIXIL リフォームコンタクト申し込みデータ(2015年4月・12月)

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